服部シライトのローカルな覚書

福島県の大学と自治体に所属しながら、 地域が抱えている課題に取り組んでいます。国内外の論文や著書をベースにした知識とノウハウの紹介と、実際に地域で実践しているプロジェクトについて発信します。

中越から見る地域づくりの本質③ 国のお金をどう地域に使うか

地域づくりの仕事していると、

国のお金を使うことって難しいなと

思うことがよくあります。

使い方によっては、地域を衰退させます。

 

最近、木下斉さんが出した

【凡人のための地域再生入門】でも、

補助金が地方のガンなんや!自分らの手で稼ぐ、

 それ以外の方法で再生なんかありえへん。」

と帯に大きく書かれています。

この本では補助金を使わずに地域を再生していく知識やノウハウが、

ストーリーでわかりやすく書いてあるのでオススメです。

ぜひ読んでみてください。

https://www.amazon.co.jp/地元がヤバい…と思ったら読む-凡人のための地域再生入門-木下-斉/dp/4478103909/ref=asap_bc?ie=UTF8

 

とはいえ震災が起きると、復旧・復興を目的とした国のお金が地域に入ってきます。

中越では「地域復興支援員」という全国初の人的支援制度を創設し、

今までにないお金の使い方をしています。

 

地域復興支援員制度は2007年にスタートし、今年の3月で終了しました。

実は私も2011年から2012年まで地域復興支援員をしていました。

2007年12月、「川口町地域復興支援センター」の開所式が行われた。このセンターは、同年9月開始された「地域復興支援員設置支援」によるもので地域復興支援員1名が配置される。その後、中越全体で地域復興支援センターが9ヶ所設置され、地域復興支援員51名が配置( 2009年8月)された。

2008年4月からは、地域復興支援員の人材育成と情報交換を目的に「地域復興支援員研修会」も始まった。地域復興支援員制度そのものが前例のない取り組みであったため、研修も手探りで進められていく。現在では、この研修ノウハウが、総務省が行う「地域おこし協力隊」「集落支援員」、そして、東日本大震災における「復興支援員」の人材育成に活かされている。

出所:稲垣文彦ほか『震災復興が語る農山村再生 地域づくりの本質』p24

 

 

復興の主役は住民であり、

地域に寄り添う支援をしたことで、

地域ごとに多様的な動きが生まれました。 

支援員は時限的な制度である。また、復興地域づくりの担い手(主体)ではなく、あくまでも主役・主体は住民である。それゆえ、住民の主体性を引き出し、支援員がいなくなっても持続性が担保される仕組みをつくっていくことが求められる。しかし一足飛びに仕組みをつくろうとしても上手くいくはずがない。それぞれの集落や地域の復興、あるいは地域づくりのスピードに合わせて、寄り添いながら支援していく必要がある。

出所:稲垣文彦ほか『震災復興が語る農山村再生 地域づくりの本質』p48

 

 

ずばり、「地域復興支援員の役割は足し算のサポート」である。

これまでの地域づくりでは、掛け算に対する費用が支払われるのみで、足し算に対する費用は支払われてこなかった。

中越地震の復興施策として復興基金によって生まれた地域復興支援員制度は、地域づくりにおける足し算の重要性を認め、そこで必要となる費用(主に人件費)を公費で負担した初めての施策である。その意味では、地域復興支援員に求められる本来の役割は足し算のサポートだと言える。そして、この考え方は、総務省が所管する地域おこし協力隊、集落支援員制度にも受け継がれている。 

出所:稲垣文彦ほか『震災復興が語る農山村再生 地域づくりの本質』p226

 

支援員制度創設から10年が経ち、

現在も東北には復興支援員がいますし、

地域おこし協力隊は5000人ほどいて今後も拡充して行く方針のようです。

 

中越の経験から得たノウハウは貴重ですが、

今は世の中が変わるスピードが早く、

地域・隊員どちら側にもニーズの変化が出てきています。

なのでこの10年間の中越の経験を引き継ぐと同時に、

時代に合わせてアップデートしていく必要があると思います。

 

詳細についてはまた別のテーマの時に紹介したいと思います。