服部シライトのローカルな覚書

福島県の大学と自治体に所属しながら、 地域が抱えている課題に取り組んでいます。国内外の論文や著書をベースにした知識とノウハウの紹介と、実際に地域で実践しているプロジェクトについて発信します。

民間公募方式での廃校活用の取り組み ①行政の体制と活動の経緯

まず三好市はどのような体制で

廃校活用の取り組みをしてきたのか

見ていきたいと思います。

 

三好市:廃校活用事業の経緯

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出所:波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 254ページ

まず最初のポイントは専従者の配置。

休廃校等の活用の取り組みは、2010年にも行われたが、専従者を配置せず関係する職員の副担当業務としたため、庁内の関係部署の意見を聞く程度に留まった。

そこで、新たに休廃校等の活用の取り組みを進めるため、2012年4月から三好市休廃校等活用事業を開始し、企画財務部の地域振興課を担当課とし専従者を配置するとともに、市議会に市有財産活用調査特別委員会を設置した

波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 254ページ

成功要因の一つも挙げられていましたね。

これは2010年の経験が効いてます。

 

次に行ったのは現状調査と、

他県の廃校活用状況の把握。

他県の廃校活用の状況を把握するため、2012年4月~11月に廃校活用の事例(中国、四国、九州)を15校視察し、(一財)都市農山漁村交流活性化機構の研修セミナー(中国、四国、九州)に 3 回参加した。その結果、他県の事例には、地元自治体の負担が無いなど有利な条件で補助金を受けて休廃校等をグリーンツーリズム系の施設に改修し、それを指定管理者が運営する事例が多いが、その投資額(補助金)に対する効果(売上高など)が低い事例が多いこと、また、補助金によりコミュニティセンター等の社会教育施設に改修した事例も多いが、利用者が1日数名と少なく、費用対効果が低い事例が多いことも分かった。そのため、自治体が改修し指定管理者が運営する方法ではなく活用主体に休廃校等を貸与し、活用主体が改修、運営する方法を検討することとした。

波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 254-255ページ

専従者を配置したこともあってか、

他の自治体に比べて視察・研修が多く、

しっかり分析もしています。

 

また自治体の指定管理の運営ではなく、

活用主体に貸与し、活用主体が改修、運営する

方法を検討している様子からは、

三好市の将来のことを考え、そのためには

どのように休廃校の活用をするべきか、

という姿勢が見えます。

 

視察・研修と並行して、

地域意見の聴取も行っています。

地域意見交換会での主な意見として、

「地域の休廃校等以外に投票所や避難場所等に利用できる施設がないので、今後も投票所や避難場所等としての利用を維持してほしい」

「施設がもったいないので活用してほしい」

「休廃校等の有効活用を望むが、地域だけでは活用案を出すには限界があるため、地域外から活用アイデアを広く公募し外部の活用に期待する」

「活用案がまとまった際には地元説明会を行うこと」

「休校について学校以外の用途に活用できるよう早期に廃校にしてほしい」

などがあった。

波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 255ページ

地域によっては、民間に貸与することを

嫌うところもあります。 

 

 

推進体制の構築

休廃校等の活用状況を見ると庁内の複数の部署が関係しており、 担当課だけでは休廃校等の活用を検討することは困難であると判断されたため、2012年8月1日に庁内を横断する「三好市休廃校等活用推進委員会と下部組織として幹事会を設置した。

波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 255ページ

 

活用アイデアの募集

2012年8月21日より三好市外からの休廃校等の活用に関するアイデアの募集を開始した。

その結果、太陽光発電など自然エネルギー系の活用など44件のアイデアの応募があった。しかし、イデアだけで事業計画がなく、休廃校等の貸与の判断ができず、最終的に休廃校等の活用には結び付かなかった

波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 255ページ

 

地域との合意形成・募集活動・事業サポートの実施

2013~2014年度において活用事業計画に関する地域説明会を三好市内9か所、9校で実施した。また、同期間において活用誘致説明会を東京で5回、大阪で4回(参加計110社)、休廃校等視察ツアーの受け入れを15回(参加計51社)実施した。また、進出を検討中の事業者や進出後の事業者に対する相談、フォローを随時行った。

波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 255ページ

 

本事業のスキーム

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出所:波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 255ページ

 

経緯の(10)まで、ざっくりと進めてきました。

次回は、活用主体が決まるまでを

紹介したいきたいと思います。