服部シライトのローカルな覚書

福島県の大学と自治体に所属しながら、 地域が抱えている課題に取り組んでいます。国内外の論文や著書をベースにした知識とノウハウの紹介と、実際に地域で実践しているプロジェクトについて発信します。

民間公募方式での廃校活用の取り組み ②活用主体と内容

前回は行政の体制と取り組みの経緯を

ざっくり紹介しました。

今回はどのような主体がどのような内容で

廃校の活用を始めたのかを

ご紹介します。

 

三好市が応募に向けて、

活用に向けた基本方針を提示

◯活用目的

活用主体が地域資源である休廃校等を活用するに当たっては、雇用の創出産業振興など地域活性化に結び付く活用を目指し、三好市地域が抱える課題解決の寄与に努めることを目的とした。 

活用主体の公募

は、休廃校等を活用する創造的なアイデアの提案及び活用主体を地元以外からも広く募集することとした。

◯活用に関する基準の策定

活用主体が休廃校等を活用するに当たり順守すべき「活用に関する基準」を策定した。  基準の主な内容は、「活用主体は、提案した事業を自ら実施すること」「事業内容が雇用の創出、産業振興、福祉の増進、その他地域振興のいずれかに該当すること」「貸与を原則とすること(現状有姿で最長5年間貸与。明記はないが、支援措置として実質的に無償貸与)」「休廃校等を活用するための改修費や管理費用は、活用主体が負担すること (民間投資、民間運営)」「活用に当たり地域との合意形成を図ること」などである。

◯地域への配慮

活用主体は、休廃校等の活用に当たり、地域の理解を得るほか、 現状の投票所、避難所等として利用されている機能を引き継ぐこと、 市は、地域が活用主体となる場合は、活用基準の緩和など必要な措置を講じることができることとした。

 

上記の指針を提示した上で、

広く公募を行いました。

その成果は次の通りです。

◯ 民間活用による短期間での休廃校等の活用

休廃校等を民間事業者等に貸与し、民間事業者等が投資、運営する民間活用により、自治体の大規模な財政支出を伴わずに約2年間で活用募集校22校中9校の活用ができた。

f:id:osakeherasu:20181222095420j:plain

波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 257ページ

◯他の未活用公有財産の活用システム構築のための知見の蓄積

本事業の実施により、休廃校等以外の未活用公有財産の活用システム構築に応用できる知見を得ることができた。 

地域活性化の促進

活用事業の規模が小さいため効果の規模も小さいが、様々な業種 (食品製造、老人福祉、創作支援、宿泊、飲食、デザイン、物流関連、スポーツ関連)による廃校施設の活用により、地域雇用の創出(計26人)、産業振興、地域福祉の向上、その他地域振興など地域活性化が図られ、現時点での本事業の目的が達成された。 また、地域住民が「地域のランドマークであった学校が廃校になり寂しかったが、本事業により再び明かりが灯り、心の拠り所を取り戻せた」「多数の地域外の人が魅力を感じ、三好市を訪問することにより自信を回復した」などの感想を持つことが判明し、本事業が地域住民の心理面にも好影響を及ぼした。

 

事業の課題(詳細)

(1)活用主体の要望への対応

活用主体から三好市に対し休廃校等の活用に関する要望があり、 その対応が必要である。活用主体の主な要望は、「資金面の支援」「各種許認可手続きの支援」「契約期間後の事業継続の補償」「施設の修理」などである。 

(2)契約時における未確定事項の対応策の検討

雨漏りで商品が毀損した場合の補償など契約時に対応が未確定となっている事項があり、あらかじめ責任の所在を徹底するための対策が必要である。

(3)活用主体の交流、協力体制の構築

本事業の活用主体には様々な業種があり、活用主体間の連携により、業務連携や新ビジネスの創出等が期待されるため、 活用主体間の連携の促進、業務の発注、新ビジネスの創出等を目的とした活用主体の交流、協力体制の構築が必要である。

波出石誠『日本建築学会技術報告書』第23巻 第53号 257ページ

 

廃校活用のうちのひとつ。

雑誌にも取り上げられています。

廃校との出会いについての記事も

書かれています。