服部シライトのローカルな覚書

福島県の大学と自治体に所属しながら、 地域が抱えている課題に取り組んでいます。国内外の論文や著書をベースにした知識とノウハウの紹介と、実際に地域で実践しているプロジェクトについて発信します。

地場産業のアップデート事例6選③

前回に引き続き、

地場産業アップデート事例の

を紹介していきます。

最後は茨城県の2ケースです。

 

 

茨城県笠間市

やきもの地場産業を核とした

「農商工観光連携」と「ひとづくり」

茨城県のほぼ中央に位置し、交通の要衝で、豊かな自然と歴史・文化、多様な地域資源に恵まれた人口7万7千人の地方都市である。農産物は、栗、菊、米等の産地であり、地場産業」として「笠間焼」「稲田みかげ石」「清酒等がある。また、笠間稲荷神社親鸞聖人ゆかりの西念寺、「陶炎祭(ひまつり)」が行われる笠間芸術の森公園等に、年間約350万人が訪れる県内屈指の観光都市でもある。笠間市は、山口伸樹市長の強力なリーダーシップの下で、「官民連携」による「同時多発型・笠間モデル」と呼ぶべき多様な「まちづくり」の仕掛けを数多く実行してきた。本稿では、笠間市のそうした取組みの中から最近の事例を中心に取上げたい。

熊坂敏彦 昭和女子大学現代ビジネス研究所 2017年度紀要 10ページ

 

笠間焼

最近における革新的取組みは、「茨城県立笠間陶芸大学校」開設である。

笠間焼産地の特徴は、「特徴がないのが特徴」と言われてきたが、今や「特徴がありすぎて一言では言えない」産地となり、個性的で多様な若手作家が輩出し活躍する「元気な産地」になりつつある。

熊坂敏彦 昭和女子大学現代ビジネス研究所 2017年度紀要 10ページ

農業分野

山口市長の発案で「(財)笠間市農業公社」が設立され3年目を迎える。農業者の育成、6次産業化、販路拡大、商工会との連携による商品開発、観光協会の連携による農業体験ツアー企画、グリーンツーリズム推進事業(笠間クラインガルテンの業務委託)、ベトナムでの営農指導等、多様な事業を展開している。

熊坂敏彦 昭和女子大学現代ビジネス研究所 2017年度紀要 10ページ

観光分野

・陶炎祭(ひまつり)…今年36回目を迎えたが、53万4千人の人出で賑わい、外国人客も増加。

・笠間発見伝…笠間市観光協会と一緒に2009年に開発した着地型旅行商品。順調に利用者が増加している。商品メニューも、陶芸や農業等の体験プランに加えて、古民家滞在プランや首都圏の中学生向けの「教育旅行」等も付加された

・かさましこプロジェクト…栃木県の陶磁器産地・益子焼産地、益子町との連携プロジェクト。

・ネットワーク構築事業…笠間市による「笠間ファン倶楽部」や笠間と東京圏をつなぐ「東京笠間ゆかりの交流会」

熊坂敏彦 昭和女子大学現代ビジネス研究所 2017年度紀要 11ページ を一部修正

このように笠間市では、

産業間連携と笠間市のサポートの元、

ものづくり・まちづくり・ひとづくりの試み

が活発に同時多発的に行われています。

その成果として、笠間ならではの

新しい文化が出来つつありますね。

 

 

茨城県筑西市

地元有力企業オーナーによる

「まちづくり・ひとづくり」

人口10万4千人の筑西地域の中核都市である筑西市は、「人と自然、安心して暮らせる共生文化都市」、「産業や観光、レクリエーション、文化をリードする魅力ある都市圏の形成」を目指している。当市には、そうした「ビジョン」を共有し、民間レベルで新しい「まちづくり」「ひとづくり」を推進しているオーナー企業経営者がおり、その拠点が「ザ・ヒロサワ・シティ」である。

当市を本拠地にし、茨城県を代表する企業グループに広沢グループがある。

熊坂敏彦 昭和女子大学現代ビジネス研究所 2017年度紀要 11ページ

廣澤氏が筑西市(旧下館市)茂田に「ライフワーク」として四半世紀をかけて創り上げてきた「テーマパーク」が、「ザ・ヒロサワ・シティ」である。「シティ」は、「健康」(スポーツ)、「自然」(農業)、「文化」(芸術・教育)をテーマにした「テーマパーク」であり、100万㎡の敷地に、ゴルフ場、パークゴルフ場、オフロードコース、マラソンコース、貸農園、クラインガルテン、薬草園、温室(農園)、梅林、竹林、バーベキュー場、宿泊施設、美術館、図書館、歯科衛生専門学校、クラシックバイク・クラシックカーミュージアム、「北斗星」等の列車や小型飛行機の展示場等が展開されており、年間を通じて様々なイベントが開催されている。

現在も、①広沢美術館の新設(隈研吾の設計、収集日本美術品の展示と集客)、②地元若手芸術家・起業家のインキュベーション施設拡充(制作活動や展示発表の場の提供)、③未来型老人福祉施設の計画等が推進されている。

廣澤氏は、長年にわたり、本業での事業収益の一部と私財を上記「シティ」の建設の他に「地域・社会貢献事業」にも投じてきた。すなわち、①「ものづくり」では、公益財団法人広沢技術振興財団による中小企業や個人事業主に対する研究開発費助成(毎年2,000万円拠出し、5社程度に供与)、②「ひとづくり」では、公益財団法人広沢育英会による奨学金提供(茨城県内の高校生・大学生向けに毎年約1,500万円拠出、約30名対象)、若手芸術家の育成支援、③「まちづくり」では、郷土史研究、里山を守る会、ご当地映画制作等への寄付、大学生の「まちづくり」調査合宿活動支援(専修大学昭和女子大学等の学生を2年間で65名、延べ16日間受入れ)等を行ってきた。

熊坂敏彦 昭和女子大学現代ビジネス研究所 2017年度紀要 11-12ページ

茨城県筑西市のケースは、

4つ目に紹介した福島県喜多方市

構図と似ていますね。

その地域の民間企業のリーダーを中心に

多様な活動が展開されています。

筑西市の特徴は、「ヒロサワ・シティ」。

圧倒的な存在感で、広沢さんの思いを

感じることができます。