服部シライトのローカルな覚書

福島県の大学と自治体に所属しながら、 地域が抱えている課題に取り組んでいます。国内外の論文や著書をベースにした知識とノウハウの紹介と、実際に地域で実践しているプロジェクトについて発信します。

【書評】ビレッジプライド ②認知度アップを目指す「みずほスタイル」

2回目となる今回は、

認知度アップのために、

邑南町がどんな施策を行って

来たのかを紹介して行きます。

 

認知度アップを目指す背景には

平成の大合併があります。

「邑南町」はなんと読むのか?

何県のどこにあるのか?

出来たばかりの邑南町の名前は、

島根県内でも認知度が低い状況でした。

なんとかして認知度をアップさせて、

町の特産品を世の中に広めて行きたい

という問題意識が邑南町にありました。

 

そこでスーパー公務員である

寺本さんが最初に手がけたのが、

2005年にオープンした、

邑南町のインターネットショップ

みずほスタイル】です。

 

始まりは寺本さんの直感力

インターネットを上手く活用することで、今まで誰も知らなかった邑南町の観光地や、石見和牛肉ほかさまざまな食材を全国の人に知ってもらうことができるはずだ。来てもらったり、買ってもらったりできるのではないかーそう直感した僕は、邑南町の観光と食を情報発信して、買い物もできるサイトをつくってみようと考えた。

当時、すでに「楽天市場」や「アマゾン」はあったけれども、今のように誰もが知っているような存在ではなかった。まして自治体が地元の産品を販売しているようなインターネットサイトなど、全国どこを探してもなかったと思う。

寺本英仁『ビレッジプライド』32ページ

上司である三上係長に

イデアをぶつける

「やってみればいいじゃないか。民間ではできない、しかし公的に必要性があることなら、行政がやる価値は十分にある。寺本が『町内の経済が成り立たないから、邑南町として外貨を獲得するシステムを構築する』と言うのなら、俺は応援するぞ」

そして、このネット事業を進めていくう上で、三上課長から2つの宿題を与えられた。

一つ目は、邑南町の特産品をつくっている生産者をすべて回って意見を聞くこと、そしてその生産者、全員がこのネット事業に参画すること。

二つ目は観光協会の予算を使うのであれば、観光協会の役員、会員にすべて説明してネット事業を納得してもらい、事業内容と予算額を理事会と総会で承認を受けること。

寺本英仁『ビレッジプライド』36ページ

寺本さんは半年以上かけて

三上係長から与えられた宿題を

やりきりました。

 

みずほスタイル開設

集まった邑南町の特産品は、

石見和牛肉、石見ポーク、日本酒、

スイーツ、自然放牧牛乳、キムチ

醤油、キャビアなどなど。

そして観光協会の理事会で

ネットショップの必要性を説明し、

なんとか理解を得て、ネットショップの

開設までこぎつけました。

 

 

売り上げを上げるために試行錯誤を重ねる

チラシを作って配りまくる

 →すぐできてお中元・お歳暮の時期には

  効果は見えやすいが、限界がある

ブログを作って毎日情報発信する

 →みずほスタイル裏側と寺本さんの

  プライベートをさらけ出す

 →アクセスが上がれば売り上げも上がる

広島市で開催されるイベントに出店

 →売り上げを上げることで生産者の

  モチベーションを維持した

・著名おとりよせサイトに取り上げてもらう

 →出品に数万円はかかるが、取り上げて

  もらえれば効果は抜群

商品のレベルを上げる

 →生産者同士でコラボレーション商品開発

・邑南町主催の全国公募型・特産品おとりよせコンテスト開催

 →800万円の予算を得るため国の補助事業に応募

 →コンテストの肝である審査員の依頼

 →食のプロによる邑南町ブランドの基準ができて、

  認知度と売り上げが向上した

・年間売り上げが2000万円を超えたところで民営化

 

2005年のオープンから2009年の民営化まで

上に書いたような試行錯誤をいち公務員が

展開してきました。

この年代は、スマートフォンSNS、無料で

使える便利なインターネットサービスがない頃

なので、どんだけ寺本さんは時間を掛けて

足で稼いだのか想像を絶します。。

 

 

そんな「みずほスタイル」を通しての

外貨を稼ぐシステムの構築を進める中で、

寺本さんは東京との関係性に葛藤します。