服部シライトのローカルな覚書

福島県の大学と自治体に所属しながら、 地域が抱えている課題に取り組んでいます。国内外の論文や著書をベースにした知識とノウハウの紹介と、実際に地域で実践しているプロジェクトについて発信します。

【海外レポート】都市人類学者から見る昨今の都市デザインプロジェクト(ミラノ)

今までは国内の紹介をしてきましたが、

これからは海外の紹介もしていきたい

と思います。

 

地域づくり、都市計画、空間づくり、

は海外の方が進んでいますからね。

 

日本で共有されていない知識や経験も

たくさんあるので、このブログを通して

少しでも知ってもらえたら嬉しいです。

 

なお僕の英語能力は一般市民レベルです。

間違った解釈をしてしまう場合もあると

思いますがご了承いただければ幸いです。

 

さて初回は手始めにミラノ工科大学の

Shan Jingwenさんのレポートに興味深い

ことが書いてあったので、その内容を

紹介したいと思います。

------------------------------------------------

Public spaces in the making from

the perspective of urban anthropology

(都市人類学視点で見る公共空間)

------------------------------------------------

背景

20世紀に入り「自動車」が登場したことで、

まちのあり方は「ひと中心のまち」から

「自動車中心のまち」に変わりました。

 

多くの都市がこの潮流に巻き込まれました。

日本もそうでです。自動車によって魅力的な

まちの風景が失われてきました。

 

そんな中、1961年にジェイン・ジェイコブズ

アメリカ大都市の死と生」を出版し、

近代都市計画を否定しました。

https://www.amazon.co.jp/アメリカ大都市の死と生-ジェイン-ジェイコブズ/dp/4306072746

 

またデンマークの建築家、ヤン・ゲールも

「Cities for People」まちの主役はひとである、

と主張して、徐々にその考え方が世界に

広がっていきました。

https://www.amazon.co.jp/人間の街-公共空間のデザイン-ヤン-ゲール/dp/4306046001

 

ちなみに洗練された経験と蓄積されたノウハウは

世界中の都市間で共有されています。

しかし日本ではほとんど共有されていません。

田中元子さんの「マイパブリックとグランドレベル」

では以上の内容をわかりやすく書かれていて、

なおかつ日本における公共の作り方の考え方とアイデア

が満載です。世界中で共有されている経験とノウハウ

がまとまっているサイトも紹介されいるのでおすすめです。

https://www.amazon.co.jp/マイパブリックとグランドレベル-─今日からはじめるまちづくり-田中元子/dp/4794969821/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1549609650&sr=1-1&keywords=マイパブリックとグランドレベル

 

この時代背景の中で多くの西欧の伝統的な

都市では、近代都市計画の流れに乗らず、

今まで積み上げてきた都市のあり方を

守ってきました。

例えばイタリアのヴェネツィアがその一つです。

 

しかしここ最近は西欧の伝統都市ミラノでも

多くの都市デザインプロジェクトが実施され、

徐々に都市の姿が変わってきました。

 

 

What is the "master key" for urban design?

さて以上のような状況を受けて、Shanさんは

次のようなことを書いてあります。

Interestingly, urban design projects that followed the expertise of city planners and architects, who have professionally trained, seem fail to impress citizens.

(興味深いことに、建築家や都市計画家など、専門的な訓練をした人が実施する都市デザインプロジェクトは市民を感動させることができないようです。 )

 

な、なんだってー!!

僕も建築・都市計画の専門教育を受けた端くれ。

びっくりしちゃいました笑

しかしよく見てみると次のようなことが続いて

書かれています。

 

After nearly all styles and genres have experienced the post generation of development and change, it is difficult to judge exactly what is the beauty. There is no uniform standard. Therefore, as a city planner or architect, the master key for urban design projects is not the physical forms of space, but some other factors. 

(あらゆるスタイルやジャンルが開発され経験してきた今、何が美しいかを正確に判断することは難しい。統一された基準はありません。したがって、都市デザインプロジェクトの鍵は、物理的な空間形式ではなく、ほかの要因にあります。)

なるほど。

こういった考え方が人類学の

特徴なのでしょうね。

 

ほかの要因のところであげているのは、

「カスタム」の仕方です。

洗練された経験と蓄積されたノウハウは、

考え方としては簡単に輸入することが

できますが、実際に実施するときには

その国、その土地の風土や思想に合った

形で移植しなければいけません。