服部シライトのローカルな覚書

福島県の大学と自治体に所属しながら、 地域が抱えている課題に取り組んでいます。国内外の論文や著書をベースにした知識とノウハウの紹介と、実際に地域で実践しているプロジェクトについて発信します。

【若新雄純】福井県鯖江市のJK課から産学官連携を考える

鯖江市役所JK課」は、2014年に鯖江市内の

女子高生がメンバーとなって、まちづくり

活動を始めた日本初のプロジェクトです。

 

みなさんもテレビや新聞で見かけた

ことがあるのではないでしょうか。

 

 

このプロジェクトは、

「全国地域づくり推進協議会会長賞」

ふるさとづくり大賞「総務大臣賞」

を受賞しています。

 

このプロジェクトを企画・実施したのは

若新雄純さん。

慶應義塾大学の特任准教授であり、

様々なプロジェクトを手がけています。

専門は産業・組織心理学、コミュニケーション論。

 

若新さんの手がけるプロジェクトを掘り下げる事で、

若新さんのエッセンスや他のプロジェクトでも

役に立つようなポイントをピックアップして

いきたいと思います。

 

①プロい市民とゆるい市民

まちづくりの場合、既存勢力として、市の職員や議員、地域活動に熱心な「プロい市民」がいます。一方で、まちづくりに関係なく暮らしている「ゆるい市民」として、女子高生などがいる。「ゆるい市民」にもっと注目すべきではないかという問題意識の中で、僕が鯖江市に提案し、2014年に始まったのが、女子高生がまちづくりに参加する「鯖江市役所JK課」です。

事業構想 2016年5月号より

JK課の提案に対して職員や議員は反対。

しかし鯖江市長が理解してくれて、

市長からのトップダウンによって実現しました。

多くの地域は、「市民が主役」と言いながらも、実際に主役を任せることはなかなかできていません。「JK課」の活動内容は、メンバーである女子高生が自分たちで決めます。

ゆるい市民である女子高生をかたい組織の行政

がサポートする事で、行政サイドに変化が。

若新「実は職員1人ひとりがかたいのではなくて、市民や地域の側に「公務員はこうあるべき」という考えが強くあって、職員の行動が抑圧されていたのかもしれません。もちろん、税金や市民の個人情報を扱うような部署には、それをしっかり運用するための「かたさ」が必要だと思いますが、高橋さんが所属する市民協働課では、市民とどうやって垣根を越えて柔軟に連携するかがテーマです。ひとくくりに公務員といっても、「ゆるい」から「かたい」まで、いろんな役割があっていいと思います。そういった公務員のあり方の多様化も、JK課を通して見えてきたということですよね。」

総務大臣賞の「鯖江市役所JK課」〜担当職員が語る苦悩と変化〜 PRESIDENT Online 2016.2.9

 

②大人が教育しない

①で起きた、かたい行政に起こった変化には

運営サイドのルールが不可欠です。

それは「教育」という考え方を手放す事です。

若新「JK課をスタートさせた時の運営側のルールとして、「大人が教育しない」とか「大人がルールを押し付けない」ということを徹底してもらうようお願いしました。あの時、高橋さんは「市役所に出入りするからには、挨拶だけはちゃんと教えたい」と挨拶にこだわっていました。でも、「挨拶も、ひとまず教えずに待ってほしい」とお願いしました。」

総務大臣賞の「鯖江市役所JK課」〜担当職員が語る苦悩と変化〜 PRESIDENT Online 2016.2.9

教育を手放すことは、女子高生・行政職員

どちらにとっても、良いことがあります。

 

女子高生にとっては、成績が付かないので、

大人や先生を気にすることなく、良い子ぶる

ことなく、言いたいこと、やりたいことを

素直に活動の中で発揮できます。

 

行政職員にとっては、大人がルールを押し付け

てはいけないということで「どう女子高生と

接すれば良いのか」と途方に暮れるところから

スタートになります。

しかしこの悩みながら活動をしていくことで、

行政にありがちな「前例踏襲主義」や、

行政ならではの思い込みやルールに縛られること

なく、本質的に活動を進めることができるように

なります。

 

①と②を見ていて興味深いのは、

教えることを手放すことで、

子どもはより多くのことを学び、

また大人も一緒になって学ぶことが

できるということです。

 

学校の先生や行政職員は、教育を手放すこと、

活動や事業に成果をつけないこと、に対して

抵抗感があるようですが、これから産学官連携

プロジェクトを実施していく上でヒントに

なりそうです。