服部シライトのローカルな覚書

福島県の大学と自治体に所属しながら、 地域が抱えている課題に取り組んでいます。国内外の論文や著書をベースにした知識とノウハウの紹介と、実際に地域で実践しているプロジェクトについて発信します。

地場産業のアップデート事例6選③

事例紹介の2回目です。

今回は山形県福島県

循環型地場産業のあり方を

見ていきたいと思います。

 

山形県長井市

長井市は人口2万8千人の

山形県南西部に位置する

「水と緑と花の町」です。

 

台所と農業を繋ぐ循環型まちづくり

長井市では環境と調和した

先進的な「まちづくり」の

取組みを行ってきました。

その一つがレインボープランです。

家庭から出る生ごみコンポスト化して有機農業で利用し、できた農産物を地域の食卓に、という計画である。台所と農業に、まちとむらに、現在と未来に「信頼のレインボー(虹)」をかけようという「循環型地域づくり」の官民一体型事業である。

推進委員会も発足し、市を事務局に生産者、消費者、商工団体、農業団体、医師まで広範な関係者の参画を得た。このように、「レインボープラン」は、農業・土壌再生と消費者の食の安全確保を図る「循環型まちづくり」を市民が発案し、市民と行政が協働で作り上げた事業である。

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出所:熊坂敏彦『「循環型地場産業」の創造』昭和女子大学現代ビジネス研究所2017年度紀要 8ページ

まちの消費者(約5,000世帯)の生ごみが分別回収され、市のコンポストセンター(堆肥センター)で約80日間かけて堆肥にされ、それが農協経由で農家に販売される。その堆肥を使用して栽培した農産物には独自の「認証制度」を設けて、ブランド化、高付加価値化を図っている。

その後(2004年〜)の展開

①農業生産…NPOの立ち上げ、体制強化

②販売面…市民市場「虹の市場」をオープン

福島県からの避難民支援事業

④六次化…商品・レシピ開発

⑤視察の受け入れ

 

 

福島県喜多方市

福島県喜多方市は、「ラーメン」(100軒以上)と「蔵の街」(4,000棟超)として全国的に有名であり、人口4万8千人の小都市に年間120万人もの観光客が訪れる。また、喜多方市は、飯豊連峰の良質な伏流水と良質な地元米を使った酒造業・醸造業が盛んな「地場産業の町」でもある。酒蔵は現在9軒あり、人口比で全国トップクラスといわれる。

 

「エネルギー自給圏構想」 

  酒と蔵とラーメンの町から発信

東日本大震災を機に、

老舗酒造を中心にして 

エネルギー事業を展開。

喜多方市の老舗酒蔵の1社である(資)大和川酒造店(創業1790年)の9代目佐藤彌右衛門会長(66歳)は、本業での経営手腕もさることながら、東日本大震災後、原子力に依存しない社会を作ることを目的に、NPO「ふくしま会議」を設立し、会津電力(株)や飯館電力(株)を立上げる等、再生可能エネルギー事業分野でも世界的に注目を浴びている。

2016年末現在、会津地域を中心に太陽光発電所を57か所、4,570kw(一般家庭約1,370世帯分)を建設済みであり、今後、太陽光発電所の増設、バイオマスエネルギー事業、小水力発電風力発電等を展開予定である。会津電力への出資者は、地元地銀、信金信組を含めた企業が40社、会津地域の自治体が6町村(磐梯町北塩原村猪苗代町西会津町、只見町、三島町)、市民ファンド等、広く多様である。

同社は、会津地域の年間100億円に及ぶ化石燃料購入代を地域内の再生可能エネルギーへ転換することを目標にしている。佐藤氏は、「食料とエネルギーの地域内自給を図って、会津地域を豊かにし、自立できる会津地域を創りたい。そして、山紫水明の日本の風土文化、豊かなコミュニティを再生するために、会津地域をそのモデル地域にしたい」と、熱く語っている。

 彌右衛門さんの記事。

 

このような地方自治体の枠を超えた民間主導の「循環型社会形成」、「地域づくり」構想の原点は、同氏の①「ネットワーク力」(人脈の広さ)、②「マーケティング力」(消費者のニーズを重視)、③「事業転換力」(酒蔵経営における製品高級化、自動化・機械化、有機農家との連携による有機米酒生産、観光酒蔵による小売・直売化、輸出・国際化等を業界内で先駆けて実施)、④先祖から受け継いだ「人間力」(祖父から教わった儒教精神、政治との距離感、文化人等との交流、父から学んだ合理的経営やまちづくりへの関与)等にあるように思われる。

前回までの3つの事例と違うのは、

圧倒的に民間主導であることですね。

 

私も福島県出身ですが、

今後の佐藤彌右衛門さんの

動向には目が離せません。